15年前、大学の同級生が寮の一室に集まり始まったMaH。「600ドルとベッドが一つ」で歩き出したカジュアルバッグブランドが、東アジア、東南アジアを中心に人気を集めるまでに成長しました。そして、2025年から日本市場に進出しています。MaHがどのような道をだどり、いまの姿となったのか。MaH ファウンダーのElvis、Ivan、Benに話を聞きました。
Photography: Taro Hirano
Editing & Writing: Branefit
15年前、大学の同級生が寮の一室に集まり始まったMaH。「600ドルとベッドが一つ」で歩き出したカジュアルバッグブランドが、東アジア、東南アジアを中心に人気を集めるまでに成長しました。そして、2025年から日本市場に進出しています。MaHがどのような道をだどり、いまの姿となったのか。MaH ファウンダーのElvis、Ivan、Benに話を聞きました。
Photography: Taro Hirano
Editing & Writing: Branefit
Elvis_わたしたち3人は大学の同級生です。学生寮の部屋が近くで、友だち同士でした。2010年に大学を卒業して、わたしがまず一人でEC事業を起業しました。
Ben_わたしとIvanは、2014年に一緒にElvisのところに加わりました。
Ivan_でも、まだそのころは〈MaH〉ではなく、〈Mr. Ace〉というElvisが当初立ち上げたブランドでした。わたしたちが加わったころは、国内ECが急成長する段階でした。
左からBen、Elvis、Ivanと、MaHのブランド活動をサポートするBranefitのメンバー。
Elvis_国内ECで一定のシェアを取った後、2018年にインドネシアやベトナムなどの海外市場の開拓を始めました。プロダクトの海外展開や販売の海外展開というよりも、ブランドとして海外に出ていきたいと考えていました。
Ivan_そのタイミングで、Mr. AceをMaHへとアップグレードしたんですよ。
Ben_わたしは、MaHに加わる前に海外での駐在経験が2年ほどありました。それがちょうどIvanがMaHの海外進出を計画しているタイミングだったんです。その後、一緒に海外事業を立ち上げました。
Ivan_わたしたちは「600ドルとベッドが一つ」とよく冗談で言っていますが、1ルームに暮らしながら手元の600ドルの資本での起業だったので、そもそも高額なカテゴリーへの参入は難しかったんです。
一方で、バッグは販売サイクルが比較的長いカテゴリーなので、1つのプロダクトで1〜2年売ることができます。つまり、少ない資本でも始められる事業だったというのが理由の一つです。
MaH ファウンダーでセールスを担当するIvan(イヴァン)。
Ben_ビジネスライクに言えば、在庫過多によるキャッシュフローへの圧迫がとても低いカテゴリーとも言えます。
Ivan_あとは流行の変化もそこまで劇的ではないというのもあります。
Elvis_2016〜17年ごろには、国内ECでの運営に一定の経験を積んでプロダクトづくりの知見をもっていたので、あるアパレルブランドから「OEM(Original Equipment Manufacturer)をやってほしい」というオファーをもらいました。
魅力的な話でしたが、わたしたちは、そのタイミングで冷静に「できること/できないこと」、そして将来どうありたいかを考えました。その答えは、バッグブランドとして歩んでいく、ということでした。ブランドとしての分岐点だったと思います。
Elvis_デザインの話の前に、事業を始めるときに定めた3つのブランド・フィロソフィー(哲学)について話をさせてください。
1つめは「デザインがよいこと(Good design)」。2つめは「品質がよいこと(Good quality)」。そして、3つめは「価格がよいこと(Good price)」、つまりコストパフォーマンスが高いことです。
MaH ファウンダーで、デザインを担当するElvis(エルヴィス)。
わたしたちはこれらを「3つのGood」と呼んでいます。すべてのプロダクトは、このブランド・フィロソフィーに基づいて生み出されています。いわば、わたしたちの礎石です。
そのうえで、わたしたちがデザインで追求することは実にシンプルです。シンプリシティ(Simplicity)と実用性(Practicality)、あとはユニーク(Uniqueness)。この3つのキーワードを念頭に置きながらデザインするだけです。
MaHは、無駄な装飾などは省き、どんなに細部であっても用途や意味をきちんと説明できるようにデザインしています。小さなことかもしれませんが、MaHとしての違い(ユニークさ)を生み出すためには必要不可欠なことです。言い換えれば、MaHならではの言語をつくることとも言えます。
市場にこれだけ多くのブランドがあるなかで、どうすればMaHを長く愛してもらえるか。ロゴを隠していてもひと目で「MaHのバッグだ!」とユーザーにわかってもらえるか。それがわたしたちがめざしているプロダクトのゴールです。
Elvis_MaHにとってシンプルにするということは、オリジナリティを追求することでもあります。シンプルなものほど、実はつくるのが難しいんです。流行によって左右されるものを取り除いて、純粋に一つのバッグをつくる。それにはシルエット、構造、カッティングなど、考えるべきことはたくさんあります。
Ivan_そして、プロダクトとしての寿命を長くすることも強く意識しています。
『iF DESIGN AWARD』や『GERMAN DESIGN AWARD』など、国際的なデザイン賞を多数獲得しています。
Ivan_日本市場の顧客とパートナーが大事にしている特徴は、MaHがいま求めていることと一致しています。
例えば、デザインに対するオリジナリティや品質に対する高い要求によって、スタンダードが高いマーケットになっています。つまり、日本市場に進出することは、MaHの努力の方向を示す行動になります。
Ben_日本市場で成功したいという思いが、わたしたちチーム全員を牽引するファクターになると考えています。デザインチームも、品質管理チームも、生産管理チームも、サプライチェーンチームも、みんな日本のユーザーに喜んでもらうために、これからも一生懸命頑張らないといけないという気持ちになっています。それはMaHにとってとてもいいことです。
MaH ファウンダーで、ファイナンスを担当するBen(ベン)。
Ivan_日本市場は世界中を見渡しても稀有な市場です。もし日本で競争ができるブランドになれれば、世界中のどこでも成功できると信じています。一日も早く日本市場の期待値を満たせるように頑張りたいと考えています。
Elvis_プロダクトの視点から言うと、Ivanが言うように日本は非常に特別な市場だと思います。日本のユーザーのニーズは、デザイン面でも機能面でも独特です。だからこそ日本のユーザーのライフスタイルや生活習慣を深く理解する必要があると思います。
それらを深く理解したうえで、近い将来、日本市場向けにオリジナルプロダクトのシリーズをつくりたいと考えています。
Elvis_日本のギフトショーへの参加をきっかけにパートナーに認められたり、直接マーケットからフィードバックをもらえたことは、わたしたちにとってはとてもいい機会でした。「Good design」「Good quality」「Good price」の方針は間違っていなかったと自信をもつことができました。これからも徹底的にやっていこうと思います。
Ben_コストパフォーマンスは世界中のユーザーが気にしている部分です。財務の視点からコストストラクチャーを見直しながら、いいプロダクトをいい値段で日本のユーザーに提供していきたいです。
MaHは、デザインとカラーのバリエーションの豊富さが特徴のひとつ。
Ivan_セールス的には、日本のユーザーは品質に対してこだわりが強いので、日本市場に投入するすべてのプロダクトの素材を、ポリエステルから「コーデュラナイロン」にアップグレードしました。この取り組みは、今後もMaHはユーザーの期待に応じて、素材の品質やプロダクトのデザインの革新を続けていくことへの態度表明でもあります。
コミュニケーションの面でも、日本のユーザーのテイストに合わせて、ビジュアルのトーン&マナーやキャプション(説明文)のボリュームのチューニングも進めています。
日本のユーザーはキャプションを細かく読み込んでくれるので、ビジュアルとテキストの割合も調整しながら、日本向けのカタログやウェブサイトをつくるなど、コミュニケーションのローカライズにも取り組んでいきます。